受賞企業インタビュー 株式会社日乃本米菓製造(全文)

●茨城で好きなところ・魅力を感じるところ

・全員茨城の出身ではない。茨城に14年ぐらい茨城に住んでいる。
・茨城で好きなところは、袋田。滝・水と森、冬は凍るし自然の四季折々の変化があって好き。必ず吊り橋「竜神大橋」を渡って、そばを食べて帰る。
・紅葉の時期、新緑の時期、自然というところは良い。
・海も山も好き。茨城も、海も山もあって故郷の三重に似ていると感じる。
茨城も三重もけっこう北から南まで長くて、四日市のコンビナートと鹿島の石油精製所があり、三重と茨城はずいぶん離れているけど、違った場所に来ている気がしない
他にも似ているところがあって、茨城は南に東京があるから、南の方が栄えていて、三重は北が名古屋に近いから栄えている。 東西格差がある(笑)

●受賞して変わったこと

・そもそも賞を取りたいと思って取り組んでいるのではない。会社が変わってきたから賞が取れたと感じる。まだ一番いい賞じゃないから、まだまだですけど。(笑)
いろいろやってきた結果で賞が取れたのは、ありがたいことだし、嬉しい事だけど、我々も従業員も「この賞を取りたいからこんな活動をしよう」と行動はしていない。

●変わってきたから賞が取れたか?もともと変えようと意識があったのか?

・そもそも何のために仕事をしているのか、あまり考えが無かった。
(代表が茨城にきたころ)
・2004年に一度倒産されて、三重の会社が買って、今やっている。

 

・始まった当初から一生懸命仕事はしてくれているけど、何のために仕事をしているとか、一人一人がバラバラだった。会社としてのまとまりがあまりなかったです。
現在はきちんと「経営理念」「ミッション」が設定されている。会社としてきちんと方向性が決まっている。

従業員のみなさんも「経営理念」「ミッション」に対して共感してくれているしそれに基づいて仕事をしてくれている。
それが徐々に浸透してきて、やっと「こういう仕事をしていこう」とわかってもらえている。
これが経営品質を取り組む前と後の違いかな。

●経営理念・ミッションは働いている人たちで決めているのですか?

・三重に本社をかまえる、(株)マスヤグループに日乃本米菓は入っている。
先ほどでた「経営理念」はグループ全体で共有をしている。また、「ミッション」は各社それぞれで設定している。
各社のミッションの目的・目標は、「この会社はどんなことをするのですか? 何のために仕事をするのですか?」の考えから基づいている。
日乃本米菓のミッションは【「おいしさとなつかしさ」を価値にして提供し続けます。】
働いている人も、自分は何のために働いているのですかと聞かれても「おいしさとなつかしさ」を提供するためにやっているのです。この一つの目標に向かって、その思いを一つにして仕事が出来る。
「経営理念」「ミッション」を理解してもらうために一番注力をした。

●「経営理念」「ミッション」を理解してもらうためにどのような行動をしたのか、伝えてきたのか。

・年に2回 経営方針納得会を実施。
ただ経営方針を説明するだけではなく、それに対して働いている人みんなが「それ良いね」、「それをやろうね」と納得して、次の行動に移してもらう。
だからわざわざ説明会と使わずに納得会という言葉を使っている。

期のはじめ 10~9月まで1年間になるので、10月と4月、年に2回全従業員を集めて丸一日かけて説明や話し合いをする。
朝からやって夕方には、この半年間、一年間のやることを良くわかりました、納得しました。という状態にするために丸一日かけて話すし・話し合いをする。
役員の考えをみんなはどう思うかと問いかける。そのためにどんなことをやっていくかと意見を出し合う。

・毎月1回、月初めに全体集会を必ずやっている。
前の月の業績話もするけど、経営理念とミッションに対してきちんとできたのか、話を盛り込んで集会をしている。

・寄り合いという制度もある。
毎月1回、1時間6~7人集まって、テーマに沿って話し合い、意見交換をする場を設けている。現在4グループがある。
月に1回なので、いろんなテーマに対して話し合いをしてもらう。
この人こんなこと、あんなこと考えているのかと考え方等を共有してもらう。
役員に話すより、仲間同士で話し合いをすると話しやすいのではないかと考えて始めた。
また、一つの方向に向けるように、話し合って・納得していく。
納得するだけではなくて、それを行動に移せる。
行動に移していくための方法・手段を身に着けてもらうために行っている。
上手くいっているかといわれると うまくいっていない部分もあるけれど、そんなことの努力をしています。
いろんな方法を使いながら、何回も繰り返しみんなに話していく、話し合ってもらう。
そういうやり方ですね。

●一番大切にしていることは、全体で話し合し考え方を共有していくこと?

・「依存から自立へ」を合言葉・キーワードにしている。
実は日乃本米菓は、たたんだ前に、東京が本社でここは水戸工場だった。
水戸工場は東京本社の言うことを聞いていれば良かった。東京本社の言いなりで、依存型だった。だって言われたことしかやらないから、言われたと通りにやっていればよかった。
でもそうだとダメだと思ったので、自分で考えて・自分で行動が取れるような人たちになろうということで、依存から自立へのテーマを掲げました。
我々としての方針はこうだよ、方向性はこうだよ、じゃあ、そのためにどうしたらいい
のかとは、やっぱり考えて欲しい。
みんなに、ああせい、こうせいはあまり言わないようにして、こちらからは、方向はこうだよ・考え方はこうだよ、でもやり方はみんなで考えようよ
やるのも自分たちでやろうね、そんなことを志向する、目指しているのでまだちゃんとはできていないです。
やっぱり自分たちで考えて、行動できるひとたちの集まりになりたいと思っている。
どんどん従業員から提案があがってきて、あれやりたい・これやりたいって言ってくれるようになったらもっといい会社になるんだろうと思う。まだまだそこまでには行けていないけど。
そこで何をやっているんだ、もっと考えないと言ってしまうと畏縮されるので、なるべく言わず、あまり言わないと進まないこともあるので、そのジレンマと戦いながら自主性を重んじながら待っていることが大事という時もあるし
待ちきれなくて、ちょっと言ってしまうこともあるし、それの繰り返しなんですけど。

●経営品質向上の為にどんな取り組みをしているのか(ブランディング)

・工場なので、お客様との直接接することがないため関係が薄い。
お客様のことを考えてということがなかなか希薄というか、今もそういう。
・お客様とどのように関わるのか、が一番の課題。
まずは、お客様を知らなくてはならないし お客様って
どんな人、何を考えてるの? なぜうちの商品を買ってくれるのか?お客様の事を知るって大事だよねって考え方に至って、
じゃどのようにお客様を知ればいい?と方法論になっていくんですが、

例えば、お店の店頭に行って、サンプルを配りながら食べて頂いて、意見を聞くべたなやり方もあり
今だと商品の裏側に2次元バーコードを付けて、読み込むとアンケートページに飛び
いろんな質問が出てくる。
月に200~300件くる、結構な確率で、高い。造っている袋を分母として、帰ってくる件数で出すと0.2いくつか 高いとおもう。
・アンケートの回答として
子供のころにおばあちゃんが家で作ってくれた味とそっくりです。
懐かしさを感じて、これを食べると昔のことを思い出します。
お客様の意見で、考え方や商品自体の価値を知ることができた。
次の新作商品をつくときのインプットにもなる。
・造る側・売る側別々に分かれていたら、意味がないので交流を大切にしている。
定期的に話し合いの場を持つ。
会議や商品開発をするときを「もみ場」と言っている。アイディアを持ってきて、出し合ってもむところという意味。
そういうことをやりながらお客様のことを良く知って、いわいるうちの商品の付加価値を高めていく。
◆売る工夫は?

・安い棚がスーパーにあるでしょ?150円の棚と300円の棚が別々になっている。
以前は、安い棚で売っていたが「こだわり棚」(値段が高い棚)で勝負をしている。
我々の価値を認めてもらうためのブランディング。自分たちの得意なところへ攻め、活かせるところで販売をする。せっかく手間暇かけて作ったものを安く売ってもつまらないし、高く売れるところで売る。
◆ターゲット

・高い棚があるスーパーのみ、高くても買ってくれる客層40・50・60代の年配シニア層。
30代ぐらいは、自分にではなく、子供達に食べさせるからという理由が多い、シニア層
は、自分で食べるから購入をしている人が多い。
買い方が違い、個人ように買っていて、値段がちょっと高くても、おいしいと売れるのだ
と。
・逆に若い人に食べてもらうことも課題。
若い人たちや子供が食べてないと、シニア層になった時に買ってくれない
茨城ロボッツに配っている。幅広い世代が観に来るので。

●現代の若者

・インスタ映え、写真を撮るために飲食店に行くイメージ。
食べに行くんじゃないんだよね、写真を撮りに行ってるんだよね。観光地に行くにしても、観光したいから行くんじゃなくて、その景色を写真で撮りたいからいったりする。
そういう感覚で、消費っていうことがされる、そういう消費行動もありなんだなと思っている。
本当は食べたいから買ってくれるのが一番いいと思うけど、消費行動の目的が違う。
昔だったら、彼女とデートするために車を買っていたんですよ。
今そういう目的で車を買う人はほとんどいないわけですよ。そういう違いがある。

●苦労したとこ

・手取り足取り仕事を教えてくれなかった。盗んで仕事をやっていた
自分が先輩になってからはちゃんと教えないと伝わっていかない
自分が何とかしなくてはならない時代で働いたので、後輩には苦労をしてもらいたくないのでちゃんと教えた。
教えるということは必要。あまり強くゆうと、今じゃパワハラって、時代的に気を付けないと。
◆今昔の違い
・30~40年前は働き改革はないし残業も休日出勤もしていた。
だから好きなだけ仕事ができ、自分がやりたいと思えば、やりたいだけ仕事ができた。やれた時代。
今の人たちはそれをやろうとすると 時間にしばられてしまう。
おもいっきり仕事をするのを時間制約とかを受けていて、やり切れてないかもしれないなと思うし、かわいそうだな。
実はさかてを取って、怠ける人たちがいると思う。
勉強した方が良いのに、やった方が良いのに、どこかで楽をしている気がする。
ちょっともったいないな。もっとやればいいのに
◆きらきらしていた?楽しかった?
・苦ではなかった、楽しかった!
◆失敗する不安はなかった?
・「いつかはクラウン」偉くなって、給料をたくさんもらったらいい車が乗れる気持ちを掻き立てられる、時代だった。
苦労をするかもしれないけど、やれば偉くなり、給料たくさんもらえる。
稼げた時代なので、めんどくさいとかも思わなかった。
今は、あまり売り上げもあがらんし、給料も上がらないからそういうのはちょっとかわいそうだなと・・・。
◆今の若い人たちの考え方について感じていること
・将来の不安を持っている。不安だと思うから将来のことは考えない、不安が大きいので、考えないのでは。そう考えることはマイナスだよな。
本当は、何のために働き・生きていくのか10年後の自分の事を考えて欲しい。
代表の若い頃は、10年後の自分が見えていた。だから苦労とかはなかった。

●現代の若者へのメッセージ(話の続き)

・だから余計に 自分として、何を目的としていくのか、どのような価値観で生きていくのかそれが凄く大事だと思うんですよね。
それをみんな見失っている。それをわざと考えないようにしているのもある。不安だから
といって、目標・目的が無いのは、向上心が無いと感じられる。
だから経営品質とか経営理念やミッション、それに対する目標設定だとか、もっときちんとするべきだと思うし、個人もさっきいったように10年後どんな自分になっていたいか?描けるように考えてほしい。
・それが会社と連動していると良いですよね、
自分の会社は10年後どんな風になっていたいか、その時に自分はこんな仕事をしていたか。
もしかしたら自分はその会社にいない目標になるかもしれないし・・・。
◆目標を立てるのが難しいと思っている人は多いのでは?

・希望はあるんじゃないの?
10年先って絶対分かるわけじゃない、せめて5年先だったら分かるかもと設定を下げる。
短期目標でもよいかもしれない。
目的も目標もわからないからただ毎日を過ごしていることで、モチベーションって上がる?良くわからないけど、趣味を充実させたい、あれを買いたいと思って仕事をしていてもそれも目的・目標になるけどただそれは自分のために働いているじゃないですか、
会社って、理念やミッションのように誰かのために働く、お客さんのために、人として自分のためだけに働いていていいの?という問題が絶対ある。
だって自分が会社に働いていて、働いている対価としてお給料が貰えると考える人もいると思うけど、我々マスヤグループは、給料はお客様よりもらっていると考えているので。
そうすると、給料をくれるのは、お客さまだと思っていれば、お客さんのためにどれだけ自分が役に立ったかと図らないと給料もらえないわけですよ、そうすると働く目的が、お給料をもらうのが目的じゃなくて、お客さんに役に立つことが目的だと考える。
そういう考え方も、経営品質の考え方を取り入れることで、考え方・とらえ方が変わるんでは。
考えないのではなく、もう少し考えてみよう。
それが人生の幸福につながるんですよ。うちの理念にある「仕事を通して人生を追及する」
どのようなことをすれば喜びにつながるだろうと思い描くことがお客様の喜びに繋げられ、それが自分の幸せなんだと感じてほしい。そうなふうに思えたら一番いいと思う。

例えば、あられを食べて「懐かしい味だ」「これ大好き」って思って喜んで食べてくれている姿を思い描いて、工場の人たちが作っていて、
「こんな美味しいあられを作ってくれてありがとう」とかえってきたら、工場の人たちは大喜びだと思う。
そういうサイクル・仕組みになると会社として・個人としても最高だなって思います。

(すまいポート21水戸 麻生)